大学受験に二回失敗し、二年間駿台予備校に通いました。その中でとても素敵な出会いがありました。駿台予備校での教授陣です。中でも英語の奥井潔先生は、その後の私の人生を大きく変えるほどの衝撃を与えてくれました。自分の大事な事、そう価値観はこの出会いによって確固たるものとなりました。
教養を身に着けることの大切さを知る
物事の本質をつかむことの重要性を知る
初めて品格・品性のある人間の存在感に圧倒され、自分もそうなろうと誓う
美しさとは何か、と初めて真剣に考える習慣を持つ
人間の心理が矛盾に満ちていることを知る
恋愛は自分を成長させてくれることを感じる
正直勉強するのは大学受験のためだと思っていました。それを根本的に覆してくれたのがここで話す奥井先生です。勉強によって身に着ける教養とはそんな浅いものではない。人間として普遍的・根本的に成長し飛躍するには、教養こそが最も大事なのだと全身で感じることができた、そんな出会いでした。
駿台予備校へ
大学は少々無理目でしたが東大を受験しました。頑張りましたが結果は不合格。東大合格に実績がある駿台予備校に入りました。東京での一人暮らし、高いレベルの受験勉強ができる、そんな気持ちだったので浪人という性格にもある種ワクワクを感じていました。
駿台予備校での授業はとても刺激的でした。勉強の内容も非常に高度でしたし、なによりも教授陣のレベルの高さが半端無く、単なる受験勉強を超えた本質的な話が随所に出てきました。勉強することが楽しくてしょうがない毎日でした。
授業に潜り込む
そんなとき同じく駿台に通う友人からある情報を得ました。英語の先生で凄い先生がいると。なんでも英語の話よりも、その題材についての話がめちゃくちゃ面白いとのことです。予備校には受験の勉強をしているという気持ちがある一方、受験の枠を超えた勉強に対する本質に触れかかっていた私はすぐに興味を持ちます。その先生は文系の担当だったため、理系の私はその授業に潜り込む必要があります。
なんとかコネを使って席を確保しその先生の授業に潜り込みました。ラッキーな事に一番前の席でしたが、見慣れない顔でバレないかなという不安も感じていました。先生が来る前からもう部屋は立ち見がでるほどで熱気に満ち溢れていました。どんな先生が来て、どんな話がされるのだろうと本当に期待で胸がいっぱいでした。
初めての出会い
教室のドアが開き、身長180mを超えたがたいのいい大きな男性がノソノソと入ってきました。そしていきなりでかい目を見開きながら、前の席の我々を端から端へとなめるように見ます。一瞬、もぐりなのがバレたかな、と思いましたが、その時徐にその巨男は言いました。
「君たち、skin depthという言葉は知っているかな」
それが巨男奥井潔先生の私が聞いた第一声でした。般若のような怖い顔とぎょろついた目、そしてどすの聞いた深い声。なんとも言えない存在感が私の心に重く入り込んだのです。
「皮一枚、はげば美人もただの肉」
そこから我々がいかに美しいものに心を惑わされるか、恋愛という努力ではなんともならないことに翻弄されるか、奥井節での講義が延々と続きました。あっという間の一時間でした。終わった後に呆然として席を立てなかったことを覚えています。確かに英語の授業でした。いろいろな文学の英語での一節を引用しながら、そこからその文に秘められた本質とそれが現実という日常の中でどのように現れるのか、それをまた英語を使って説明してくれるのです。
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